ドローンによる災害調査と対応|活用法・メリット・課題などを解説

 ドローンが災害時の対応に利用されていることをご存知ですか?


 近年、テレビの撮影などでドローンが使われている場面をよく目にしますが、ドローンは様々な場面で実用化されています。ヘリコプターなどより準備に時間がかからないことや大きな場所を必要としないことから、災害時の迅速な被害確認や情報収集などに貢献しているのです。
 この記事では、そんなドローンによる災害時の対応について、活用法やメリットについて紹介していきます。


災害時のドローン活用法

 


 災害が発生した際、ドローンは小回りの良さから様々な場面で活用されます。特に災害が発生した直後には迅速な対応が求められるため、他の航空機(飛行機やヘリ)に比べてドローンが優れているのです。
 この章では、災害対応におけるドローンの活用法について、代表的な5つをご紹介します。

災害における被害確認

 災害発生時にドローンを利用することで、迅速に被害状況を確認することができます。ドローンは利用するまでの準備が比較的少なく、小回りが良いために災害時の迅速な対応が可能です。また、ドローンに搭載したカメラを利用すれば、広範囲の被害状況を確認したり、逆に特定箇所を詳細に確認したりできるのです。
 早い段階で被害状況を把握することができれば、災害対応計画の策定も早くなり、その後の災害対応を迅速に進めることができるでしょう。

被災者の発見

 災害発生時にドローンを利用することで、逃げ遅れた被災者を発見することができます。ドローンは他の航空機と比べて飛行高度が低く、撮影できる映像の分解度が高いために被災者を発見しやすいのです。
 また、光学カメラ以外にも赤外線カメラや携帯電話の電波などを利用して被災者を発見することもできます。ただし、状況によってはセンサ類が上手く作動しないこともあり、それぞれ場面に応じた使い分けが必要です。

 搭載機器 発見方法 課題
   
 光学カメラ 空撮映像より目視で被災者を探す 障害物が多い場所では発見しづらい
 小型携帯電話基地局 携帯電話やWi-Fiの電波を通じて携帯電話の位置を検出する 被災者が携帯を所持している時のみ有効
 赤外線カメラ 人の体温を検知して被災者を探す 季節や水害などで体温が下がると検知できない


情報の収集

 災害発生時にドローンを利用することで、周辺のマップ作成や安全管理など、災害対応に必要な情報を収集することができます。災害によって陸路が通行できなくなっている場合でも、ドローンであれば迅速に情報を収集することができるのです。
 近年では、ドローンを用いて短時間で広範囲な3次元測量を行うことができるため、災害直後に被災地のマップを作成することができます。この詳細データやドローンによる上空からの監視を利用することで、2次災害を防いで被災者や救援者の安全を守ることができるでしょう。


 


物資の運搬

 災害発生時にドローンを利用することで、被災地へ救援物資を運搬することができます。大きな災害によって陸路が遮断されたり、有人航空機の離着陸が困難な場合でも、ドローであれば必要な物資を運搬することができるのです。
 積載可能な重量はドローンの種類によって異なりますが、一般的な輸送用ドローン(積載重量は約5kg)は高重量の物資を運ぶことができません。しかし、最近では積載量が最大200㎏もあるドローンが開発されるなど、大型ドローン開発が活発になっています。そのため、ドローンによって運搬できるものは今後どんどん増えていくでしょう。
 また、緊急時の薬や血液など比較的重量が小さく被災時には重要となる物資は、緊急性も高いことから道路インフラが寸断された際などにドローンでの運送に向いていると言えます。

被災者の救助

 災害発生時にドローンを利用することで、救助者のリスクを抑えて要救助者を救助することができます。火災の場合にはドローンを使って消火剤を散布したり、赤外線カメラで危険な箇所を判別したり、水害の場合にはロープや浮き輪を要救助者へ届けることができるのです。
 従来は、消防隊が燃え盛る火の中で要救助者を捜索したり、レスキュー隊が増水した河川に入って救助に向かっていました。しかし、ドローンが救助者を補助することで、救助者はリスクを減らすことができるのです。そのため、2次災害を減らすことにも繋がります。


災害時にドローンを使うメリット

 

 コンパクトで小回りが利くドローンは、災害対応に利用することで様々なメリットを享受ですることができます。この章では、ドローンが災害対応にもたらすメリットについてご紹介していきます。

迅速に対応できる

 災害時、ドローンは他の有人航空機と比べて迅速に被災地で活動することができます。有人航空機の場合は要請から出動までの準備に時間がかかりますが、ドローンであれば準備が少ないため短時間で済みます。
 また、ドローンは飛行速度が速いものもあり、有人航空機に引けを取りません。近年では、飛行速度が100km/hを超えるものもあるのです。

空港や広い場所を必要としない

 ドローンは狭いスペースでも離着陸が可能なため、災害時でも周辺環境に左右されずに利用できます。有人航空機は離着陸に広いスペースを要するため、大規模な災害が発生した場合には、早急な対応ができないのです。
 ドローンであれば、災害現場付近まで接近してから利用することが可能であり、災害発生後の初動対応として活躍できます。

詳細情報を取得できる

 災害時、ドローンを利用することで被災地周辺の広範囲な情報や特定箇所の詳細情報を集めることができます。ドローンはセンサと基準となる基地局、専用ソフトを用いて上空から三次元測量を行ったり、高度を落として飛行することで現場の詳細を確認することができるのです。
 また、最近では複数のドローンを連携させて運用する技術が活発に研究されています。複数機によってより多くの情報を処理し、施設の巡回や災害から逃げ遅れた人の確認などに活用されます。

救援者のリスクを低減させる

 災害時、ドローンを使って被災者を救助したり、被災地の安全性を確認したりすることで、救援者に降りかかる危険性を低減することができます。救援者の代わりにドローンが危険な役割を担うため、救援者は二次災害に巻き込まれるリスクが下がるのです。
 また、小型のドローンであれば、屋外だけでなく屋内や配管・タンクの中なども飛行することができます。そのため、ドローンを使って施設の安全性を確認したり、人が入りにくい下水道などの狭い場所も調査することができるのです。

ドローンにかかる経費が少ない

 災害対応で活躍するドローンは、他の有人航空機と比べて本体価格および維持費用を非常に安く抑えることができます。ドローンは無人航空機なので、整備や操縦者の育成、メンテナンスなどの経費が安いのです。
 ドローンの経費が安いということは、ドローンの導入に対するハードルを引き下げていると言えるでしょう。


ドローンの災害対応における課題

 

 災害時におけるドローンの活用法やメリットを紹介してきましたが、ドローンによる災害対応にはまだまだ課題が存在します。この章では、ドローンによる災害対策が抱える課題について紹介していきます。

運用者の育成が必要

 ドローンを用いて災害対応を行うためには、ドローン運用者の育成が重要となることはいうまでもありません。迅速に情報収集を行うためには、ドローンの操縦スキルが必要となります。
 また、ドローンを用いて救助作業などを行っている場合には、ドローンの接触や墜落による二次被害は何としても防がなければなりません。災害場所などは地形が複雑になっている可能性もあり狭い箇所での操縦なども求められる可能性が高く、また不測の状況にも冷静に対応できるような熟練した操作スキルが求められるでしょう。
 近年では、ドローンの完全自動運転技術なども開発されていますが、この技術はあくまでも平常時に用いられるものです。刻一刻と状況が移り変わる災害対応において、優先順位を判断しながらドローンを自動操縦することはできないでしょう。
 実際に災害後のインフラ確認作業において、半自動操縦を行おうとしたチームよりも全てマニュアルで迅速に対応した当社チームの方が対応時間が5分の1も早く済んだ事例もあります。

天候に左右される

 天候によってはドローンの飛行が困難となり、災害対応を行うことができなくなります。ドローンが飛行できるかどうかは、主に「気温」「風速」「降水確率」によって判断できます。

 項目 注意すべき内容
  
 風速 風速が強い(8m/s以上)とドローンの制御が効かなくなり、最悪の場合墜落します。
 気温 気温が低すぎるとバッテリーの性能が落ちてパワーを失い稼働時間が短くなります。
 降水確率 精密機器のため、雨によって故障する可能性があります。

 気温や降水確率は確認しやすいですが、風速は一般的に地上よりも上空の方が強いため注意が必要です。風が強いと上手く制御できず、最悪の場合墜落して二次災害を起こしてしまう可能性があります。

長時間飛行が難しい

 一般的なドローンは飛行可能時間が短く、災害対応で長時間飛行することはできません。そして、その飛行可能時間はドローンが荷物を運搬することでより短くなります。荷物を運搬して機体が重くなればなるほど大きな揚力を得るためにより多くの電力を消費してしまうのです。
 しかし、近年では最大飛行時間が長いも開発されており、ドローンの飛行時間は今後伸びていくと考えられます。飛行時間が長いドローンには、燃焼エンジンを積んだドローンや、バッテリーとエンジンを組み合わせたハイブリッドドローンなどもあります。

積載可能荷重が少ない

 一般的なドローンは積載可能荷重が少ないため、災害対応で大型の物資を運搬することはできません。小型の物資を運搬する場合でも、複数の物質を一度に運ぶことはできないため、ドローンによる運搬には時間と労力が必要となるでしょう。
 最近では、積載量が最大200kgもある大型ドローンが開発されており、将来的にはドローンの積載可能量は益々大きくなっていくと考えられます。ただし、ドローンを用いて運搬を行う場合には、輸送中の荷物を落下がしないように注意しなければなりません。ドローンの積載量が大きくなればなるほど、荷物が落下した場合の被害が大きくなってしまいます。
 また、大型ドローンはその巨大化・積載可能量の増加に伴い、反比例して飛行時間が少なくなるというデメリットもあります。

通信状況に左右される

 災害時の通信状況によっては、活用方法が限られる可能性あります。現在、日本国内ではドローンの操縦に用いられる電波は一般的なWi-Fiと同じ帯域帯である、2.4GHz帯での使用に限定されています。
 近しい帯域の電波が飛び交う状況になると、通信状況が悪くなり飛行距離が短くなったり、山の向こうなど障害物の反対側に行くと距離が長いほど電波が悪くなり操縦しにくくなります。
 しかし、ドローンは電波が切れた場合にもフェイルセーフで自動で帰還するようになっています。その際には、設定を事前に確認しておくことが重要です。この辺りは慣れたパイロットであれば必須項目としています。

災害時ドローン飛行の特例

 

 災害時、ドローンの使用は、一定の条件を満たすことで特例が適用されます。一般的に、ドローンの使用は航空法によって定められているのですが、災害時は規制が免除されるのです。
この章では、ドローンの使用に関する航空法の紹介や、災害時の特例について紹介していきます。

航空法におけるドローンの取り扱い

 一般的にドローンに関しては、航空法によって飛行禁止空域や飛行方法が定められています(2015年12月10日)。定められた場所、方法以外で利用する場合には、国土交通大臣による手続きが必要となります。

飛行禁止空域に関する取り決め
  • 空港周辺で飛行禁止


  • 150m以上の高度で飛行禁止


  • 人家の密集地域で飛行禁止


飛行の方法に関する取り決め
  • アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと


  • 飛行前確認を行うこと


  • 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること


  • 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと


  • 夜間は飛行禁止


  • 目視の範囲内で飛行を行う


  • 周囲の人・物と30m以上間隔を空ける


  • 催し場所(イベント会場)での飛行禁止


  • ドローンによる危険物輸送の禁止


  • ドローンからの物質投下の禁止


 航空法に定められている「無人航空機の飛行等に関する罪」に違反した場合、50万円以下の罰金が課されます。

災害時のドローン運用は例外

 災害時のドローン運用に関しては、航空法で定められている禁止内容を申請なしで行うことができます。ただし、都道府県警察や国・地方公共団体またはこれらから依頼された者が、事故や災害時に災害対応としてドローン利用する場合に限られます。
 また、航空法の例外対応を受けている場合でも、ドローン利用にあたっての安全確保の責務は全うしなければなりません。


災害用ドローンの導入状況と活用事例

 

 災害時に多くのメリットがあるドローンですが、未だ導入状況や活用事例は多くありません。そこで、この章では現状のドローン導入状況や将来性、実際の活用事例についてご紹介していきます。

災害用ドローンの導入状況

 平成29年6月に消防本部に対して行われたアンケートによると、現在70箇所の消防本部にて災害用ドローンが導入されています。また、現在は導入していないものの、将来的に導入を検討している消防本部は100箇所以上にも及びました。
 平成27年にドローンが首相官邸屋上で発見される事件が発生したり、ドローン製品が数多く発表されたことを受けて航空法が改正されて以来、ドローンの需要は増大しています。今後、さらにドローン技術が進歩して積載重量が増えたり、飛行時間が長くなれば、災害用としてもドローンの需要は増大していくでしょう。

平成28年(2016年)熊本地震

 熊本地震においては、被災地の空撮によって非常に効果的な働きをみせました。主にドローンの空撮映像を使って目的地までの道のりを確認したり、熊本城や神社仏閣などの被災状況を確認するために使われました。
 ただし、平成27年12月に「改正航空法」が施行されてすぐの地震だったこともあり、地震直後にドローンを上手く活用することはできなかったようです。震災直後の混乱状態において新技術であるドローンを活用するためには、事前に関係者と連携してしっかりと調整しておくことが重要なのです。

平成29年(2017年)九州北部豪雨

 九州北部豪雨においては、ドローンを用いた被災地の空撮を基にした情報のリアルタイム更新などが活用されました。被災の影響で人が立ち入れない場所にドローンを飛ばし、撮影した被災地の映像から交通規制や避難場所の解説状況をウェブ上で共有したのです。新たな情報はリアルタイムで更新されるため、被災者にとって便利なサービスとなりました。
 また、これらの情報は政府や自治体の災害対応にも活用され、行方不明者の捜索活動にも用いられたとのことです。ドローンによる迅速な初動対応と情報の共有化が大きな役割を果たした良い例と言えるでしょう。


災害用ドローンの将来性

 災害用だけにとどまらず、今後はドローンにおける自動航行技術の開発がますます活発化していくでしょう。経済産業省によると、ドローンが完全に自動飛行できるまでには以下4つの段階が存在し、現在はレベル2まで認められています。そして、政府は2022年度までにレベル4飛行を達成することを目指しており、環境整備や技術開発が進められているのです。

 レベル 内容
  
 レベル1 目視内飛行(操縦)
 レベル2 目視内飛行(自立)
 レベル3 目視外飛行(無人地帯)
 レベル4 目視外飛行(有人地帯)

 目視外飛行を可能にするためには、AIがドローンに搭載されたセンサの情報をリアルタイムに計算し、障害物などを避けながら決められたルートを進まなければなりません。また、目視外飛行を有人地帯で行うためには安全性の確立が必須であるため、更なるAI技術の開発が求められるのです。


災害用ドローンが被災者・救援者を守る!

 この記事では、ドローンを用いた災害対応について、活用方法やメリット、活用事例について解説しました。ドローンは他の有人航空機と比べて出動準備が短いため、災害発生時に迅速に災害対応を行うことができます。そして、空撮情報を基に被災情報を一早くウェブ上で共有・リアルタイム更新することで、その後の災害対応をスムーズに行うことができるのです。災害時のドローン活用事例も増えてきており、今後も災害用ドローンの需要が拡大していくでしょう。

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