ドローンはどれくらいまで飛行できるのか古宇利島で限界に挑戦

ドローンの限界飛行距離は一体何キロ?
 よく聞かれることの一つに、ドローンは何キロ先まで飛ばせるのか?という質問があります。これは機体によって距離が異なってきます。飛行可能な距離は、バッテリーがどれくらいもつのか?と、送信機からの電波がどれくらい届くのか?(伝送距離)の二つの要素で変動します。そのため、この二つに関係する要素によって更に距離が変わります。例えば風が強ければ推進力はより強い力が必要なので、バッテリーを多く消費します。そうなると、飛行距離は短くなります。
 DJI社のPhantom4proの日本国内の最大伝送距離は「4km」です。電波は4kmまでしか届かない、つまり4kmまでしか飛ばないということです。なお、米国や欧州、中国とは技適の関係で多少の違いがあり、例えば米国では最大伝送距離が7kmとなっています。
 機体や使う電波帯域(2.4GHz帯域の仕様)は同じですが、国による電波の状況が違います。同様の帯域に電波が多く存在したりしていると影響を受けるというわけです。なお、ドローンは電波が途切れると自動で離陸場所(ホームポイント)に戻ってくるフェイルセーフが働きます。

 では、いろんな条件はあるけれど、本当に4kmも飛べるの?と思い限界まで飛ばしたのが昨年でした。沖縄の古宇利島から飛ばし、延々と海上を飛ぶドローンは在宅したり、旅行に行けない今、動画だけでも青い海を味わえるかと思います。
 飛行限界距離からみる古宇利島や海はどうなるのか?ご覧ください。


沖縄で5,115mも飛行できる理由ともう一つの限界

 飛行距離に大きく関わってくるのが電波の伝送距離です。要するに電波はどこまで届くのか?ということなんですが、電波という波は他の波が多ければ多いほど届きにくくなります。ご自宅のWi-Fi環境が悪いので、2.4GHzではなく5GHzのWi-Fiにしたら問題がなくなった、というのは電波の力の強さもありますが電波が乱雑に存在していない環境ということでもあります。
 本州と異なり、沖縄の特に今回のような古宇利島での飛行は民家も少ないですし、他の電波を発生する機器や電波そのものも少なく、海や空気と同じように電波にとってもキレイな環境と言えるのです。そうなると、電波のキャッチボールもスムーズに行われるため最大伝送距離の4kmを超えて飛行できたのではないでしょうか。

 5,115mに到達した時、バッテリーは未だ60%も残っているのがコントロール画面から分かります。距離もこうしてみると、古宇利島の直径よりも長く飛行時間も10分ほど飛んだところなので、電波が途切れさえしなければ、もっと遠くまで飛ばせそうに操作しながら感じていました。

 地図上でもう少し引いて見てみると、その距離の長さがよく分かります。海上を10分で5キロほど移動できるなら、物資の輸送にも確かに使えそうだな、とかぼんやり考えていました。しかし、この後に訪れるもう一つの限界を味わい、冷や汗が流れるのを感じる羽目になりました。

 バッテリー残量は60%、飛行時間は10分ほど。通常なら30分近くは飛行できるので、未だ半分以上バッテリーが残っているのが分かります。ただ、そろそろ戻らないとギリギリになるな、と思い戻り始めた矢先でした。


バッテリー残量によって出てくる警告とフェイルセーフを味わう羽目に・・・

 ここでもう一つの限界が訪れたのです・・・。そう、バッテリーの残量不足です。画面に突如として現れる警告。今まで強風の警告は出ていなかったのですが、強風だから気を付けろという英語メッセージとともに、バッテリー残量が不足していると出たのです。
 戻り始めて100mも経っていませんし、未だ残量が60%もあります。行きと同じだけかかるとすると、確かにギリギリではあるのですが思っているより早い警告でした。

 そうなんです海上に出ていたから分からなかったのですが、古宇利島から追い風に乗って5,000m地点まで意気揚々と進んだのです。となると、当然ですが帰路は向かい風。必要とするパワーも行きよりも大きく、同じだけのバッテリー量で飛べるとは思えません・・・。

「しまった・・・」

 思わず言葉として漏れるほどの事態。つまり、こちらに戻ってくるまで電波は問題ないのにバッテリーがギリギリどころか、保たないのではないか?と最悪の事態が頭をかすめます。海上に墜落、そのまま洋上を漂流することになるのではないか?と。

 バッテリーを少しでも長く延命させるために、まず録画していた動画を止めます。次にRTHの自動ではなく手動にし、飛行モードもマニュアルに変更し安定性は少し欠きますが、最高速度で飛行できるようにしました。余計なバッテリーを使わず、一刻も早く帰る、それだけを考えて一心不乱にドローンが飛んでいる方向や画面を見つめます。
 やがて、古宇利島がだんだんと近づいてきました。1,000m地点でバッテリー残量は10%ちょっとだったと記憶しています。間に合うかどうか、ギリギリのところ。祈るように操縦する送信機を持つ手にも力が自然と入ります。
 残り500mをくらいになるとドローンはバッテリー残量が10%未満になったために、自動で着陸を始めます。これも自動で戻ってくるのと同じく、上空からのバッテリー切れによる落下を防ぐために徐々に着陸し始めるフェイルセーフの一つなんですが、残り800mですから、目の前にして海の藻屑と消えた日にはたまりません。

 いや、なんとか間に合うだろう!?という考えと、最悪ボートか何かでドローンを回収すれば大丈夫かな?というもしもの事態について冷静に考える自分がいましたが、送信機を握る手だけが力強くドローンを進めます。
 この際には自動で着陸し始めていたのと、時間に余裕もないことからタブレット端末で取り消しができないかな?などと悠長な操作はできません。ドローンが海面に着陸するのを阻止すべく、ひたすらに前進とともに上昇させ続けていました。着陸と上昇に挟まれ、結局ドローンは水平方向へのみ移動を続けました。若干、下降していたかもしれませんが・・・。  そしてついに!バッテリー残量が1%に!海上をクリアして最悪、水没するというケースは免れましたが、飛行している場所は崖のようなところなので落下したら取りに行けません。なんとか踏ん張って、せめて目の前で落下してくれないかと思いながら、ほぼ自分と同じ高さでの飛行に。

 ドローンを飛ばして3年くらい経ってますが、初めて見ました。バッテリー残量が0%となるのを。0%でも飛ぶんだな、という妙なことに感心したのを覚えています。

この時には発動していた自動着陸がじわじわと聞いていたのか、地面から3mくらいの高さに。すごい勢いでドローンが滑り込んできた、という感じでした。ずっとステータスには「Landing」の文字が。そして普段なら、残りの飛行可能時間を表すところには、横線が。もう飛べる状態じゃないということがよく分かります。


 ドローンの飛行限界、Phantom4 proであれば5kmまで飛べることと、バッテリーは当たり前ですが風の方向に気をつけながら、アプリに出てくる残り時間や飛行距離は状況によって関係なくなるわけです。
 また、状況が揃えば最大飛行距離は5kmまで行けるので、一般的に普及している汎用ドローンを活用する際に、どのようなメッシュが描けるのかが分かり、具体的なソリューションの際にも織り込んで活用ができるでしょう。

 最後に、なかなか外出する機会がない状況ですので、実験映像ではなく沖縄の古宇利島の景色を写した空撮動画で、ちょっとした息抜きとしてご覧ください。

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