航空法によるドローン規制|200g未満でも適用される法令も解説

 航空法によってドローンの利用は規制されていることをご存知ですか?

 テレビ番組でドローンにより撮影された動画が使われる場面が増えています。先日も東京都の山手線内に位置する白金で、ドローンにより撮影された動画が使われている番組がありました。そういった魅力的な空撮動画を多く目にする一方で、「ドローンは都心では飛ばせないのではないか」、と問い合わせを受けることがよくあります。
 これは正解でもあり、間違ってもいます。ドローンを飛行させることができる場所や、またどのような法律が関わっているのかについて、実例を交えながら説明致します。


航空法によるドローンの規制

 

 航空法はドローンの利用を規制する代表的な法律です。2015年にドローン関連の事件が多数発生したことを受け、同年9月にドローンの規制内容を盛り込んだ改正が行われました。そして、2015年12月より改正航空法が施行され、ドローンの利用に関する規制が始まったのです。
 この章では、そんな航空法で定められているドローンの飛行可能領域や使用ルールについて解説していきます。

航空法が適用されるドローンの定義

 ドローンとはどのようなものを指すのか?という規定をみてみます。航空法ではドローンは無人航空機と呼ばれ、無人航空機は以下のように規定されています。
 「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(本体とバッテリーの合計)のものを除く)」
 ここでいう回転翼航空機がドローンに当たります。他にもラジコン飛行機なども航空法の対象となるのです。
 200g未満のドローンは航空法の対象外となるため、今から説明する規制には適用されません。ちなみに、この200gという重さがどこから来ているか知っていますか?実はソフトボールの重さから考えられている、と言われています。ドローンが問題になった時に、人に当たっても怪我をしない重さを考えた時に、とあるメーカーの社長がソフトボール(190g前後)を参考に意見したそうです。少し納得してしまいますね。

事前許可が必要な3つの空域

 改正航空法、と呼ばれるのがドローンを規制した法律です。次の3つの空域でドローンを飛ばすには、事前の許可が必要となります。
飛行禁止空域に関する取り決め
  • 空港周辺で飛行禁止


  • 150m以上の高度で飛行禁止


  • 人家の密集地域で飛行禁止


 規制を見ると、都心では飛ばせないと思われるかもしれません。しかし、事前の許可が必要と記載されている通り、許可を得れば飛ばすことができるのです。人口集中地域と空港などの施設は、国土地理院のサイトからどこが該当するか調べることができます。これを見ると、都心だけでなく人が多い人口集中地域が規制されているのがわかるでしょう。

 規制地域でドローンを飛ばしたい場合は国交省の専用サイトで許可申請を行い、許可証を貰います。許可を得れば規制地域は人口集中地域や、250m上空でも飛行可能になります。

承認が必要な6つのルール

 改正航空法には許可以外に承認を得る必要がある以下の6つのルールがあります。
飛行の方法に関する取り決め
  • アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと


  • 飛行前確認を行うこと


  • 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること


  • 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと


  • 夜間は飛行禁止


  • 目視の範囲内で飛行を行う


  • 周囲の人・物と30m以上間隔を空ける


  • 催し場所(イベント会場)での飛行禁止


  • ドローンによる危険物輸送の禁止


  • ドローンからの物質投下の禁止


 承認の中で審査が厳しくなったのは「イベント上空飛行」です。以前に、お祭りのお菓子徹きでドローンの落下事故が起こったためです。実はこの事故、事前に許可と承認を受けたものと違うドローンを使っていたのです。許可と承認には操縦者の登録だけではなく、どの期待を使うのかシリアル番号も含めて登録する必要があります。
 よって、航空法で規制された地域やルール外のドローン飛行を行う場合には、操縦者と機体の2つで許可・承認を得るのです。

申請を行うまでの流れ

 改正航空法に記載のある「飛行禁止空域」での飛行や「飛行のルール」によらない飛行を行う場合には、事前に国土交通大臣や地方航空局長の許可を受ける必要があります。書類の提出は少なくとも飛行開始予定日の10開庁日前までに行わなければなりません。
 申請書類の不備などによっては、許可・承認が得られるまでに1開庁日以上の時間を要する場合もあるため、余裕を持って手続きを始めておくと良いでしょう。
許可・承認の申請書は、内容によって大きく以下2つの提出先に分けられます。


・空港事務所長:空港周辺、または150m以上の空域における飛行許可の申請
・地方航空局:上記以外の許可・承認申請


 また、国土交通省への申請方法としては、「オンライン」「郵送」「持参」の3種類が存在します。オンライン申請であれば、操作をWebブラウザ上で完結させることができるのです。詳しい申請方法は、国土交通省の公式HPにて紹介されています。

参考 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html

申請方法の種類

 ドローンの使用に関して、国土交通省へ申請を行う方法は「個別申請」と「包括申請」の2種類が存在します。包括申請は個別申請に比べて柔軟性が高いことが特徴で、仕事としてドローンを操縦している方は包括申請で手続きしている方が多いです。
 また、包括申請の中にも種類があり、「期間包括申請」と「飛行経路包括申請」の2種類に分けられます。この章では、各申請方法について詳しく解説していきます。

個別申請

 個別申請とは、ドローンの飛行スケジュールが確定しており、飛行経路が単一の場合に行う申請方法です。個別申請は包括申請に比べて取得しやすいですが、ドローンを飛行させる度に申請が必要であるため、ドローンの利用頻度が多い方にとっては面倒だと言えます。また、確定したスケジュールを後から変更することはできません。

包括申請

 包括申請とは、同一の申請者が一定期間に「繰り返し飛行を行う場合」や「複数の場所で飛行を行う場合」に行う申請方法です。複数の飛行スケジュールを一度に申請することができるため、天候が良くない場合にはフライトスケジュールを別日に移動させることができます。
 包括申請は業務目的でのみ許可されるため、いかにドローンの利用頻度が多くても趣味利用の方は個別申請を行う必要があるのです。

期間包括申請
 期間包括申請とは、一定期間(最長1年)内に同一のドローンパイロット(申請者)が繰り返しフライトする場合に選択する申請方法です。期間包括申請を取得すると、一定期間内であれば同一の場所で何回でもドローンを利用することができます。

飛行経路包括申請
 飛行経路包括申請とは、同一のドローンパイロット(申請者)が複数の場所でフライトを行う場合に選択する申請方法です。ドローンの飛行経路が確定していない場合でも、「飛行想定範囲(県全域・市全域など)」を設定することで申請を行うことができます。


航空法以外によるドローンの規制

 

 ドローンの利用を規制しているのは航空法だけではありません。200g未満のドローンであっても適用対象となるため、しっかりと理解しておきましょう。この章では、ドローンの利用を規制する主な法令として、6つをご紹介していきます。

民法

 ドローンは、民法207条に記載がある「土地所有権」によって利用が規制されます。実は、土地所有権は地面だけでなく上空にも適用されるのです。条文には「土地の所有権は法令の制限内においてその土地の上下におよぶ」と記載があり、高さの上限は明記されていませんが、今までの法律解釈では高度300mが上限と言われています。
 改正航空法にて地表面から150m以上の高さで飛行してはならないと定められているため、他の方が所有している土地の上空を無断で飛行させない方が良いでしょう。

電波法

 ドローンは通常電波を使って操縦してますが、電波法の適用のない2.4GHz帯域を使っています。しかし、FPVを使って目視外飛行をする際には画像の遅延を抑えるために5.7GHz帯域幅の電波で画像をFPVモニターに届けるため、その際に「電波法」の適用対象となります。電波法とは、電波が他の装置と混線しないように利用できる電波について定めた法律です。
 趣味で使う場合には、第四級アマチュア無線技師以上の資格と無線局としての開設が必要となります。趣味とは、お金が発生しない非営利での活動を指しています。

 一方で、仕事でFPVモニターを活用する際、例えばマイクロドローンなどが最近ではよくFPVモニターと一緒に活用する場合など、金銭が発生すると営利目的となりアマチュア無線ではなく業務上の使用、つまりプロとなります。

 仕事として5.7GHz帯域幅を使う場合には第三級陸上特殊無線技士以上の資格が必須となります。時々、FPVはアマチュア無線、産業用ドローンは第三級陸上特殊無線技士と区分けする人がいますが電波法では先ず営利目的か非営利目的か、によって区分けられているので間違えないようにしましょう。

※総務省 電波利用ホームページ参照 https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/drone/index.htm

道路交通法

 ドローンの利用によって一般交通に影響を及ぼす場合、「道路交通法」の適用対象となります。道路交通法で定められる「道路」には車道だけでなく歩道も含まれるため、歩道での使用も対象です。
 道路交通法の対象用途で使用する場合には、事前に管轄警察署長の許可を受ける必要があります。ただし、ドローンを使って道路の上空から撮影を行う場合など、一般交通に影響を及ぼさない場合や、危険と判断されない場合には現行制度上は許可はなくてもいいと警察庁が国家戦略特区等の要請に対する回答書で回答しています。

 提案管理番号 規制等の根拠法令等 検討要請に対する回答
   
 062040 道路交通法第77条 道路における危険を生じさせ、交通の円滑を阻害するおそれがある工事・作業をする 場合や道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような撮影等を行おうとする 場合は、ドローンを利用するか否かにかかわらず、道路使用許可を要するが、これらに 当たらない形態で、単にドローンを利用して道路上空から撮影を行おうとする場合は、現 行制度上、道路使用許可を要しない。
 079060 道路交通法(第76条第2項)・・・禁止行為
(第77条1項)・・・道路の使用の許可
道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような撮影等を行おうとする場合 は、ドローンを利用するか否かにかかわらず、道路使用許可を要するが、これに当たら ない形態で、単にドローンを飛行させようとする場合は、現行制度上、道路使用許可を 要しない。

※内閣府国家戦略特区「(警察庁)国家戦略特区等提案検討要請回答」より一部抜粋

 判断は管轄警察署が行うはずですので事前に確認、連絡をしておいた方が確実でしょう。

文化財保護法

 国が指定する重要文化財およびその周辺におけるドローンの利用は、「文化財保護法」によって禁止されています。また、ドローンの操作ミスなどで重要文化財に損害を与えた場合は文化財保護法違反となるので注意しましょう。
 重要文化財周辺でドローン利用するためには、管理団体への事前確認が必須です。基本的に業務以外での利用は禁止されています。

個人情報保護法

 ドローンで撮影した映像によっては、「個人情報保護法」の適用対象となります。映像に人や個人情報などが映り込んだ場合、「肖像権」や「プライバシー侵害」が関わってくるのです。
 総務省が発表した指針では「肖像権、並びに個人情報の保護に配慮するようお願いします。」と示しており、ドローンが撮影した映像の取り扱いには注意が必要です。

小型無人機等飛行禁止法

 ドローンを重要施設および周辺約300mの地域上空で利用する場合、「小型無人機等飛行禁止法」の適用対象となります。ドローン利用の規制対象となる重要施設としては、以下が挙げられます。

・国の重要な施設等(国会議事堂、内閣総理大臣邸など)
・対象外国公館
・対象防衛関係施設
・対象空港
・対象原子力事業所
 など


航空法を理解してドローンを利用しよう

 

 この記事では、航空法によるドローン規制について、適用条件や規制内容を解説しました。近年、ドローンは様々な分野で利用されるようになり、私達にとって身近な存在となりました。ドローンを個人利用する方も増えていますが、利用する際には航空法などの規制をしっかりと理解しましょう。
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